グレッグが童謡を歌い続けている理由。
日本の寿司、相撲、カラオケ以外にも、
童謡は同じ親密度で世界へ伝達していける質の高い文化だと感じたからです。
海外に認識されていくには時間がかかるでしょうが、グレッグのその歩みは確実に実を結んでいます。

Greg Irwin 童謡唱歌への想い

童謡とは?
1867年、日本が文明開化した時代、外国から音楽の先生を呼びました。 ある先生は簡単な外国の歌に日本語の詞を付けました。 その頃から日本人の作詞、作曲家たちは西洋風の子供の歌を書き始めた のです。 このような曲は唱歌と呼ばれ全国の小学校で音楽の授業にて唄われてい ました。 1918年、赤い鳥運動が始まり質の高い子供の歌を作る為に日本のトップ 作詞家、作曲家達が集まりました。 彼らが書いた曲は童謡と呼ばれプログレッシブな雑誌『赤い鳥』に掲載 されました。 それらの童謡はその後、学校の教科書に紹介され日本の音楽教育の原点に なりました。皆さんがご存知の童謡には、愛が溢れています。 そして決して古くはない曲なのに日本文化の大切な部分となっています。

"私は日本に来るまで「童謡」や「唱歌」について全く知りませんでした。 そんなある時、当時ヒットした日本のキッズソングの英訳を依頼されました。 日本の心を愛し理解していた私の訳は好評を博し、そのまま新たな楽曲の訳 を頼まれる事になりました。 そのとき手渡された何編かの詞とテープ。 仕事にのぞんだ私はその詞を英語に訳しながら、感動のあまり思わず瞳を潤 ませてしまったのです。 何という優しさでしょう! 何と愛くるしさに溢れる詩なのでしょう! またその楽曲の何と美しいことか! 私を包む優しい旋律。それが私と童謡の出会いでした。私はそれまで日本の童謡唱歌を一度も聴いたことがありませんでした。 どうしてこれ程までに素晴らしい詩や曲が、海外に知られていないの でしょう? もし世界中の人々が、日本の童謡唱歌を聴く機会があり、又それらの 詩の意味を理解したら、どれ程の感動を与えることができるでしょうか。私はかつて日本の童謡が盛んに作られた時代や、その背景を調べました。沢山の童謡や唱歌を学び、そしてそれらを英語に訳し始めました。

"童謡唱歌には、かつて日本のどこにでも見られたであろう、 美しい自然環境が唄われています。 美しい自然を愛でる心や、動植物への優しい眼差しは、 子供達の素直で優しい心を育んできたに違いありません。 童謡唱歌は、子供達に、それらの価値を教えたいと願う、 大人たちの心をも反映していたに違いありません。 そして童謡唱歌のこれらの価値観や素晴らしい芸術性は、決して日本人だ けのものではなく、世界中の人々にも通じ、共有できる、普遍性を持って いると思うのです。

"現在、残念なことに、古い言い回しの童謡唱歌は日本の子供達の音楽の授業で あまり歌われることがないそうです。 そして童謡唱歌は海外では全くと言ってよいほど知られていません。 幼い子供への虐待や彼らを巻き込む事件、歪んだ親子関係や陰湿ないじめ、 自殺のニュースに接すると、悲しみで胸が張り裂けそうになります。私のこの いたたまれない気持ちは壊れゆく自然環境への想いも伴って私を駆り立てるのです。 日本にはこれほど優しさに溢れた、美しく可憐な歌が沢山あるのに。 大人も子供も、この素敵な童謡唱歌を聴いて、唄って、優しい気持ちになってほしい。 そしてこの童謡唱歌の素晴らしい詩や曲の普遍的な価値を、世界の人々にも知って ほしい。私は日本の童謡唱歌に出会ってから、その素晴らしさを伝えること をライフワークと感じるようになりました。 そしていつしか私は童謡の伝道師と呼ばれるようになったのです

- Greg Irwin